斜面を下る、二枚の車輪。
車輪には金属の骨格がついていて、僕はその上に座っている。bi-cycle、日本語では自転車と呼ばれるこの乗り物は、家の前から続く長い坂道においてその真価を発揮する。はじめは緩やかに。それから急激に。僕を載せた二枚の車輪は正の加速度を持ちながら位置エネルギーを運動エネルギーへと変換し、終端速度へと漸近してゆく。それに伴うささやかな飛翔感は、エネルギー収支の外側にある。